毎年開催のキルトジャパン賞も今年で26回目を迎えることになりました。作品はA部門:ミニタペストリーテーマ:「生命」とB部門:袋ものの2部門で募集。本審査は、岡野栄子さん、服部まゆみさん、石上友美(本誌編集長)によって行われ、各賞が決定しました。協賛社賞も合わせ、計142点の入賞作品を発表します。
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グランプリ
中村房子(三重県)
「はるかな人へ」 72×72cm
- 作者のコメント
- ある本に「人は生まれ変わる」とありました。それなら早くに逝ってしまった友らは、今どこでどうして、と想いが廻ります。
- 審査員からのコメント
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岡野:仕立て、色使いが巧みで地味なのに派手やかです。デザインもすっきりしていて、ベースのミシンキルトに加えハンド、刺しゅうなどいろいろなテクニックをうまく組み合わせた作品です。
服部:全体のバランスが抜群です。バインディングの布使いとミシンによる仕立ても凝っていますし、ミシンキルトと刺し子刺しゅうの合わせ方などが巧みで、和の色使いによく合っています。
石上:白地の部分のステッチがきれいで存在感があります。丸い輪の部分で生命の表現をしているところがいいですね。
金賞
小山内悦子(青森県)
「プリンス」 80×80cm
- 作者のコメント
- 陸や水中でも生存するワニに強い生命力を感じます。ワニ王国の王太子!キングの威厳はないけれど少し風格が出てきたプリンスです。
- 審査員からのコメント
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岡野:ワニの生命力を感じる作品です。細かいピースを巧みに合わせてワニの皮膚感がよく表現されていますね。全体の仕立てもおもしろく仕上がっていますが、ワニの色合いがもう少し濃くてもメリハリが効いたかもしれませんね。
服部:アイデアのおもしろさに惹かれました。しっぽの動きに躍動感があり、ワニが生き生きしていますね。バインディングがもう少しピリッとできればよりよくなると思います。
石上:構図が大胆でサイズ感もぴったり、存在感のある作品です。ベース部分が甘い配色なのであえてギャップを狙ったのでしょうか。
出原美智子(和歌山県)
「リメイク・ブラウスBag」 40×30×10cm
- 作者のコメント
- 毎日処分されていく布の多さのことを思い、微力ながら自分の着古したブラウスに昔の人がやっていたように刺し子をし、再生してみました。
- 審査員からのコメント
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岡野:ブラウスをバッグにしたアイデアがおもしろいですね。持ち手がいびつになっているところにも破調のあやうさがあって楽しめます。
服部:斬新なアイデアが詰まっています。刺し子の刺しゅうの色と口布のグレーが合っていて持ち手の黄色がより引き立ちます。
石上:不ぞろい感が味になっています。配色がうまく持ち手がアクセントになっていますね。素材もおもしろくモダンな作品です。
銀賞
栗森貞江(広島県)
「おとぎの国のボーダー」 64×72.5cm
- 作者のコメント
- 大好きな布、1cm足らずの布も透明糸で縫い押さえ、小さな細長い布はゴミ入れからジグザグで押さえ作品に。思ったより大変でした。
- 審査員からのコメント
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岡野:ミシンキルトの良さを最大限に生かした作品です。ボーダーの部分が出色で、小さな布を重ねて押さえてというミシンならではの技術を使って新鮮なデザインができました。
服部:ミシンキルトだからこそ可能になった作品。布をのせてアップリケをすることで素材、要素を作っていき、そこから構図が広がっていくおもしろさがありました。
石上:ボーダーがおもしろいですね。中の図柄のかわいらしさと、外のインパクトのあるデザインがぎりぎりのバランスでお互いを引き立てています。
山口かおり(鹿児島県)
「願 “生命輝く未来”へ」 79×79cm
- 作者のコメント
- ストレチア。花言葉は「輝かしい未来」。なにかと騒々しい世の中ですが、いつの日か“生命輝く未来”が訪れることを願って作りました。
- 審査員からのコメント
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岡野:中央の窓部分の透明感、透け感がいいですね。きれいにまとまっている作品です。
服部:古典柄を使った端正な中心部と対照的な外周のストレチアがダイナミックで、生命力にあふれていますね。
石上:むら染めの布をうまく使って光を感じさせる作品です。壁に掛けた時により映えるタペストリーですね。
上原孝子(神奈川県)
「閃光」 25×31×8cm
- 作者のコメント
- オレンジと黒、この色のコントラストが気に入り、バイアステープ幅を細くすることで、より繊細な光の流れを表現してみました。
- 審査員からのコメント
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岡野:隅々まで手を抜かずに作っていて、そのテクニックは見事です。
服部:着物にも持てる鮮やかな柄使いです。二色使いのいさぎよさが気持ちいいですね。
石上:仕立てがきれいで完成度の高い作品です。和布の色が黒地に映えて魅力的でした。
大音和江(京都府)
「ウールの円のバッグ」 30×30×8cm
- 作者のコメント
- コートを着た時に持ちたいバッグを考えてみました。楽しくさげられそうです。
- 審査員からのコメント
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岡野:自分が持ちたくなるバッグでした。ウールの味わいが生かされ、四角のパターンを使いながら丸みのある形に仕立てているところがいいですね。
服部:持ちたいバッグNo.1です。ウールの色合わせが素敵でおしゃれです。
石上:ウールのほっこり感のなかにカラフルさもある作品です。ログキャビンをモチーフにしているので、作ってみたいと思わせてくれるバッグですね。
審査員賞 A部門(ミニタペストリー)
太野垣仁美(京都府)
「であえてほんとうによかった」 80×80cm
- 作者のコメント
- 息子夫婦のところに子供を授かり、初孫が誕生しました。待望のベビーに喜びと感謝をし、心を込めてこの作品を表現してみました。
- 審査員からのコメント
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岡野:今回のテーマに最もふさわしい作品と感じました。命が生まれることの幸福感、その命を大切に思う多くの人たちの心が表現された温かい作品ですね。
恒次弘美(大阪府)
「風に乗って大空へ・・・」 79×79cm
- 作者のコメント
- マーガレットの花のように、穏やかで笑顔の友人が風と共に空の彼方へ旅立って行きました。楽しかった頃のことを思い出してくれてますか?
- 審査員からのコメント
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服部:ミシンキルトの作品ですが、ひと目見てさわやかさ、バランスのよさに惹かれました。花びらが散っていきそれがまた次の生命につながるというデザインが今回のテーマにも合っていますし、色使いもきれいですね。
加瀬麻美(東京都)
「春 ~つぎの場所へ~」 73×73cm
- 作者のコメント
- いのちがリスタートする春。たんぽぽの、コンクリートの隙間にも根を張る力強さと、次の場所へと軽やかに飛び立つ潔さに憧れます。
- 審査員からのコメント
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石上:たんぽぽの生命力がよく表現できています。上からのぞいた構図に迫力を感じました。リズム、躍動感がありテーマに合っていました。
松本礼子(長野県)
「Tree of Life」 74.2×73.8cm
- 作者のコメント
- 森の仲間たち、植物も動物も生命力にあふれ、仲良く暮らしている様子を、お話の中の一場面のように表現してみました。
- 審査員からのコメント
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岡野:作り手の真面目さが伝わってきます。きれいでかわいらしくてしかも生命力も感じられる気持ちのいい作品です。
服部:構図、色、すべてのバランスがいいですね。キルティングも丁寧ですし、ボーダーの部分もスカラップやアップリケを入れて工夫のあるさわやかな作品です。
石上:モチーフの一つ一つがかわいらしく、完全なシンメトリーではないけれどバランスのとれた作品で好感が持てます。
審査員賞 B部門(袋もの)
栗森貞江(広島県)
「思うがままに」 27×36×10cm
- 作者のコメント
- 綿の上に適当に布をのせ、アップリケし、輪郭を縫い、どこからでもキルトし、足りないと思えばそこを縫い、あまり考えもせず縫いました。私の心はワクワクでした。
- 審査員からのコメント
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岡野:さまざまなステッチのテクニックがおもしろく、口布や持ち手にも工夫があって持ちたいなと思いました。にぎやかな色使いですが温かみがあって使いやすいバッグです。ただファスナーにつけたチャームはテイストが違うかな。
木口久子(宮崎県)
「つながる」 30×39×10cm
- 作者のコメント
- 縁、人と人の出逢いでいろいろなことの始まりが生まれていくように! 大きな丸、小さな丸でこれからは大きな輪になって行けるようにパッチワークを続けて行きたい!
- 審査員からのコメント
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服部:リバースアップリケを全体に施した力作です。丸の大きさに変化をつけた上にステッチがしてあり、おしゃれなデザインになっています。普段使いにも派手すぎず持ちたいと思うバッグでした。
木下千鶴子(大阪府)
「想い出アルバム」 34×48cm
- 作者のコメント
- 昔スケッチブックを無地のキャンバス地のバッグに入れていました。おしゃれなバッグがあればよかったのに‥‥と思い出します。
- 審査員からのコメント
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石上:スタイル画風のイラストをうまくいかして、レトロな雰囲気の作品になりました。アップリケとステッチがうまく使われているので、すっきりとしたおしゃれ感が出ましたね。
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