藤田久美子さん
1950年東京・渋谷生まれ、1970年女子美術短期大学図案科グラフィックデザイン卒。卒業後広告デザイン会社勤務。結婚後ご主人のデザイン事務所を手伝うかたわら、アップリケ教室の指導にあたる。ICU(国際キリスト教大学)で行われた小野ふみえさんのアンティークキルトの特別講演会のレクチャーから、キルトの歴史に興味を持ち始める。1987年文化出版局から初の著書「アップリケパターン集」を出版以来、「トリコロールワールド」、「キルトのアトリエから」、「パッチワークパターン318」など現在までに11冊の自著書がある2002年からは東京国際キルトフェスティバルに出品。また、キルト商品の企画や布地メーカーのプリントデザインも、手がけている。
藤田さんのキルトへの入り口は、キルトの歴史や女性史からだったという。高校時代まで歴史が好きで、進路を決める時もまず大学の史学科を考えたが、卒業しても就職が難しいと思い、女子美術短期大学へ進んだ。卒業後、デザイン事務所に勤務しながら、ICU(国際キリスト教大学)で小野ふみえさん特別講演会のアンティークキルトの歴史を受講し、同じくアメリカ在住の小林恵さんのキルトについての文章にも触発されて、キルトへの興味が深まったという。「それまでもアンティークキルト展や洋書を見て、キルトの分割デザインやアップリケには興味がありましたが、女性史に絡んだキルトの歴史を知って、これは単なる手芸に止まらない奥深いものがあると思いました」
布好きは昔からで、小さい頃から母が作ってくれる洋服で育ち、布切れには親しんできた。布の素材感が与えてくれる安らぎや温かさ、特に色や柄の自由なデザインは、尽きせぬ興味の対象として身体に沁み込んだものだった。
藤田さんはキルト作家というより、キルトデザイナーとしての自分を繰り返し語るが、世に言うキルト作家という範疇から大きくデザイナーよりのスタンスに立つ自分を、率直に理解して欲しいからに違いない。「私は他のキルト作家の方々のように、素晴らしい大作を制作する力はありません。ですから、テキスタイルデザイナーが生み出した布そのものを、柄を生かしてできるだけシンプルなデザインで、簡単に早くできる作品を提案することに興味があります。グラフィックデザイナーだったので、どうしても柄のデザイン性が一番に目に飛び込んできますね」
そこで藤田さんの作品の特徴は布を大きく扱った三角、四角つなぎが多く、布柄のしゃれた感じを最大限生かして、ボタンやレース、テープ、洗濯タグなどでアクセントをつけるという手法。
キルトジャパン2006年5月号より一部抜粋
- 父親から譲り受けた机でデスクワークをする藤田さん。そして子供たちへと、親子三代にわたって使われたお気に入りの机である。
- グラフィックデザイナーだった時の作品の多くは処分され、唯一残っている貴重なもの。ミニチュアの洋服は約100枚を制作。教室でのバリエーションの教材としても使用した。
-
ハート型のアップリケのタペストリー4点 1985年頃制作
素朴で温かな味わいのあるカントリーカラーは、藤田さんにとって永遠の配色である。 - アイデアソースの洋書と雑誌の切り抜きの色々。オリジナルプリントの配色や教室での配色指導によく使うそうだ。